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<カジュアル美術館>竹久夢二《夏姿》《絵封筒画稿》 竹久夢二美術館  

2024-08-18 HaiPress

◆理想求めたおしゃれの手本

《夏姿》 1915年ごろ絹本着色111.8×40.2センチいずれも竹久夢二美術館提供

浴衣姿の女性が膝を崩し、くつろいでいる。視線をそらし、手を頰に添えて恥じらう姿は愛らしい。「大正ロマン」と聞けば、竹久夢二(1884~1934年)が描いた、こうした女性像を思い浮かべる人も多いのでは。今年は生誕140年に当たる。

◆初画集は大人気

岡山県本庄村(現・瀬戸内市)に生まれ、16歳で上京した。独自に絵を学び、早稲田実業学校在学中から新聞や雑誌に絵や文を投稿し、1905年末にデビューした。大きな目に白い肌、黒い髪。センチメンタルな雰囲気の女性像は「夢二式美人」といわれ、09年末の初画集は青年男女を中心にブームに。着こなしやポーズをまねる女性も多く、「美しい女性像」を形作っていった。

竹久夢二美術館の徳重美佳学芸員は「テレビもインターネットもファッション雑誌もない時代に、女性たちは夢二が描いた女性像を手本におしゃれを楽しんでいたそうです」とその熱狂ぶりを明かす。

一躍、人気画家となった夢二は14年、現在の東京駅近くに半襟や浴衣、千代紙、絵はがきなど、自身のデザインを施した日用品を扱う「港屋絵草紙店」を開いた。店は女性客に人気で、新たな名所としてにぎわったという。その店に通っていた客の1人が本作のモデルとなった笠井彦乃、「最愛の恋人」といわれる女性だった。

◆創作背景に恋愛

彦乃は日本橋の裕福な紙問屋の一人娘で、画家を志して夢二とは師弟関係から恋愛に発展。ただ、二人の関係は彦乃の父親の反対や夢二の元妻の存在からおおっぴらにできず、二人は根津や上野、小石川など同館がある本郷・上野界隈(かいわい)でひっそりとデートを重ねた。夢二が京都を拠点とした際も、彦乃は絵画修業を口実に追いかけて共に暮らしたが、結核を患い、23歳の若さで亡くなった。

瞳が大きな容貌から「夢二式美人」の形成に影響した元妻・岸他万喜(たまき)。流行歌「宵待草」の元となり、夢二とひと夏の恋を演じた長谷川賢(かた)。夢二は彦乃をはじめ、多くの女性たちと恋愛をした。時代を象徴する女性像を創り上げた夢二にとって、恋愛とは何だったのか-。徳重さんは「理想の女性を求めて作品に反映させ続けた人なので、不可欠なものだった」とみる。

《絵封筒画稿》1917年紙・水彩・鉛筆縦 19.6~22センチ、横 7.1~8.2センチ

大正ロマンや昭和レトロがブームだが、最近は美人画ではなく、デザインの方から夢二にはまる若い人が多いという。《絵封筒画稿》は、港屋絵草紙店の商品を扱う大阪の柳屋書店から依頼を受けて、夢二が絵封筒のデザインを手がけた図案原画だ。橋の風情を描いた日本画風のものから、植物の曲線をいかしてアールヌーボー調に描いたもの、女性の裸体を大胆に構成したものなど、表現の引き出しの多さに驚かされる。夢二は輸入された美術書や雑誌から海外の流行をいち早く取り入れ、それらを参考に独自のデザインを生み出したという。当時の人々を夢中にさせたデザインは、現代の私が見ても斬新に映る。

時代を超えて人々に愛されている夢二の作品。徳重さんは言う。「生活を美しく飾りたいという思いから制作したり、恋愛や社会問題など日々経験することについて人の感情に寄り添い表現していたりするので、時代を問わずに作品の持つメッセージが響くのだと感じます」

◆みる竹久夢二美術館(東京都文京区弥生2の4の2)=電03(5689)0462=は、東京メトロ根津駅、東大前駅から徒歩7分。JR上野駅公園口・しのばず口から徒歩20分。いずれも9月22日までの展覧会「生誕140年記念竹久夢二の軌跡」で展示中。開館時間は午前10時~午後5時(入館は同4時半まで)。月曜休館(9月16日は開館し、翌17日休館)。入館料は一般1000円、大・高生900円、中・小生500円。

文・飯田樹与

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