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演芸場の町の銭湯喫茶『喫茶深海』(北区・十条)

2024-09-20 HaiPress

目でも舌でも楽しめる深海ゼリー&十條湯クリームソーダ

この「町喫茶」の取材で十条にやってくるのは2度目だ。以前「十条珈琲」という店を訪ねたときの散歩の途中、喫茶店付きの銭湯を見かけた。あそこがどうにも気になるので、アポ取りして訪問することにした。

大衆演劇の篠原演芸場には役者の看板がずらり。

十条駅の西口に出ると、前に来たときは工事中だったタワマンがすっくと聳(そび)えたっている。南北に続くメインストリートの十条銀座から富士見銀座にかけては前取材で歩いているので、今回は駅北側の踏切から東方へくねっと延びる演芸場通りに入った。狭い商店街をほんの200メートルもいくと大衆演劇の篠原演芸場がある。

戦後まもない昭和26年(1951年)の開場らしいが、このハコが有名になったのは、ここを拠点にしていた梅沢富美男が売れた80年代以降だろう。僕が雑誌の取材がらみで初めて入場したのは90年代だったはずだが、平土間の席の並びに常連風のオバチャンがいて、彼女が追っかけている役者にクルマを買ってやった…とかの遍歴談(どこまで真実かはわからない)を幕間に聞かされたことをよく覚えている。

最近のアイドルっぽい役者の興行看板を横目に劇場前を通りすぎると、やがて交差するのが昔の岩槻街道。最近拡幅されて、古めかしい商家は消えてしまったけれど、少し北進した左に十条冨士神社というのがある。以前に歩いた要町の方でも富士塚のある冨士神社を見たが、ここは道路の拡幅でかなり削られてしまった、という感じだ。その角を曲がって、西方の十条銀座へと至る横道はグーグルマップに「フジサンロード」と記されているが、富士の山開きに合わせた6月末の例祭(お冨士さん)の際、沿道に露店が並ぶらしい。以前歩いた富士見銀座といい、十条は富士信仰の厚い町のようだ。

インパクト大のフォント。ちなみにここは駐車場ではありませんのでご注意を。

アーケードの十条銀座商店街を突っ切って、幅の狭い道を少し直進すると、左手に銭湯・十條湯がある。隣の空き地側の塀に、赤と青のペンキで「コインランドリー」「喫茶深海」「サウナ」「十條湯」と横書きされたショットが目にまぶしい。

十條湯の看板の下にある「ゆ」と書かれたのれんをくぐり、中へ入っていくと、浴場の入り口手前のスペースがカウンター主体の喫茶室になっている。ここが「深海」と名づけられた喫茶店なのだが、まずは本体の十條湯の歴史から説明しよう。

「昭和23年(1948年)の開業なんですが、戦前から環七の向こう側に『はるの湯』というのがありまして、そちらが始まりなんですよ。主人もそこで生まれました」

ツルが描かれている男湯

と語るのが、店の女将(おかみ)・横山昭子さん。最初の「はるの湯」は、御主人の母上の名前「はる」に由来する。戦後3年目に開業した十條湯は昭和の末年、昭和63年(1988年)に大改築、平成元年(1989年)頃から1コーナーを喫茶スペースにした。店の名物メニューのクリームソーダはこのときからあるらしいが、「深海」という正式店名を付けて本格スタートしたのはコロナ禍の令和3年(2021年)の夏。外部のプランナーの指導のもと「深海」のロゴやメニューも含めて、レトロ喫茶のイメージが強化された。ちなみに「深海」のネーミングは、女湯側の壁に描かれた深海魚の絵が発想の元らしい。

メニューのなかでは、「デザート」と表記されたスイーツの品目が凝っている。深海ゼリー、女将さんプリン、十條湯クリームソーダ…。深海ゼリーはブルーハワイのシロップを使ったケミカルブルーのゼリーなのだが、山型のその形状は十条に縁の深い富士山を思わせるところもある。

目でも舌でも楽しめるメニューが自慢。深海ゼリー(500円)と十條湯クリームソーダ(850円)。

店の取材を終えた午後3時、銭湯の方が開いたので、ひとっ風呂浴びることにした。開場まもない男湯は、連日やってきているような町の御老練風が目につく。湯は温泉ではないけれど、深海ならぬ深く掘った井戸からの冷水の心地がとてもいい。

湯上がりにまた立ち寄った喫茶深海には、若い女性客が1人、2人といて、あのケミカルブルーの山型ゼリーにカメラを向けて、味わっていた。風呂上がりの僕は、カウンターの隅に置かれたタマゴ型の装置が気になった。これは地元メーカーが営業をかけている地ビールのサーバー。そこからグラスに注がれた、シトラスの香りのする冷え冷えのクラフトビールをノドに流しこんだ。


◆◆◆

今回訪れた喫茶店

喫茶深海

住所東京都北区十条仲原1-14-2


電話03-3900-4600


十條湯営業時間15:00〜23:00日曜朝湯8:00~12:00


定休日金曜


喫茶深海営業時間15:00〜21:00


定休日月曜・金曜

※新型コロナウィルスの影響で、掲載したお店や施設の臨時休業および、営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2024年9月20日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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PROFILE

泉麻人コラムニスト

1956年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストとして活動。東京に関する著作を多く著わす。近著に『黄金の1980年代コラム』(三賢社)『夏の迷い子』(中央公論新社)、『大東京23区散歩』(講談社)、『東京 いつもの喫茶店』(平凡社)、『1964 前の東京オリンピックのころを回想してみた。』(三賢社)、『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮新書)、『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などがある。『大東京のらりくらりバス遊覧』の続編単行本が2021年2月下旬、東京新聞より発売された。


なかむらるみイラストレーター

1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学卒。著書に、月刊たくさんのふしぎ『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)がある。泉さんの本では『東京ふつうの喫茶店』『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『大東京 のらりくらりバス遊覧』『続・大東京 のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)などでイラストを担当している。


https://www.tsumamu.net/


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