2024-08-14 HaiPress
1967年フォロン財団©Fondation
Folon,ADAGP/PARIS,2024-2025
頭から木の枝さながらに矢印が四方八方へと生え出た人間たちが、その重みで体を左右に傾けながらこちらへと向かってくる。ずんずんと進む無数の足音が聞こえてきそうだ。
都市が矢印の標識であふれていることに気づいたフォロンは、それをモチーフとして好んで用いた。行き先を示してくれるはずの矢印に、ともすれば惑わされ翻弄(ほんろう)される人間たちを表そうとしたのかもしれない。彼らは考える気力さえも奪われ、無自覚に集団行動をする群衆のようだ。あるいは、フォロンが作品を通して自然破壊に警鐘を鳴らしていたことを考えると、ひょっとして都市化によって伐採された樹々(きぎ)の亡霊だろうか。
アーティストとして生きていくことを決意し、1955年に工業デザインを学んでいた学校を去ってから5年間、フォロンはひたすらドローイングに専念し、イラストレーターとして活動した。軽やかで的確な線描の世界には、単にユーモラスなだけではない、社会へのするどい眼差(まなざ)しが垣間見える。(東京ステーションギャラリー学芸員半澤紀恵)
「空想旅行案内人ジャン=ミッシェル・フォロン」展は9月23日まで東京都千代田区の東京ステーションギャラリーで開催中。詳細は同館ホームページにて。
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